【PDF版】第2期マザー・テラサワ講義録3巻—カール・シュミット「政治的なものの概念」
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本書は「哲学芸人」を標榜するマザー・テラサワが、現代政治の混迷を予見したかのようなドイツの思想家カール・シュミットの代表作を独自の視点で解剖した講義録です。シュミットが説く、法が停止する「例外状態」こそが政治の本質であるという冷徹なロジックは、現代の中東情勢や知性の危うい一線とも地続きの問題として鮮やかに解きほぐしていきます。
■目次
選挙日に読むシュミット「政治的なものの概念」/「友」と「敵」の区別こそが政治の本質/自然法と実定法—法の手前にある道理/国家なき政治などない/例外状態から政治が生まれる/ヴェルサイユ体制とワイマール憲法の矛盾/議会制民主主義の否定から独裁の肯定へ/マキャベリとの共鳴/ハーバーマス、ガブリエルが越えた「一線」の源流/丸山眞男が認めた「優秀な敵」
巻末付録 【学習ノート+演習問題3問】
■編集部解題
本書は、哲学芸人・マザー・テラサワが主宰する定例読書会「思想のユーモア編」の記録である。本講義が開催された2024年10月27日は、奇しくも第50回衆議院議員総選挙の投開票日であった。自民党裏金問題や石破新政権の電撃的な解散など、異例の経過をたどった選挙の熱狂(あるいは白け)が冷めやらぬなか、マザー・テラサワは、あえて極めてアクの強い政治思想書を俎上に載せた。
今回取り上げられたのは、ドイツの法学者・政治思想家であるカール・シュミット(1888-1985)の代表作『政治的なものの概念』(1932年版)である。シュミットは、その理論的精緻さと鋭利さから「優秀な敵」(丸山眞男による評)として戦後の政治学者たちに恐れられ、同時に研究され続けてきた巨大な存在である。
本講義でマザー・テラサワが焦点を当てるのは、シュミット思想の核心である「友敵理論」と「例外状態」である。シュミットによれば、道徳における「善と悪」、経済における「利益と損害」のように、政治に特有の究極的な区分は「友と敵」の峻別にある。そして、政治の本質は、平和で法的な秩序が機能している平時ではなく、法が停止し国家の存亡がかかる異常事態、すなわち「例外状態」においてこそ立ち現れるとされる。
マザー・テラサワはこの理論に対して「アレルギーしか覚えない」「救いがない」と強い拒絶反応を示しつつも、現実の政治力学を的確に突いているその凄みと魅力を率直に語っている。講義では、シュミットの思想がいかにして形成されたのか、その背景にある第一次世界大戦後のドイツの疲弊やヴェルサイユ条約への不満、ワイマール憲法下の議会制民主主義の機能不全が丁寧に解説される。自らのキャリアアップの上昇志向と時代状況が結びついた結果、シュミットはナチスへの加担という取り返しのつかない道へと進むことになる。
本講義の最もスリリングな点は、この半世紀以上前の危険な思想を、現代のリアルな問題へと接続している点にある。マザー・テラサワは、激化する中東情勢(イスラエルによるパレスチナ・レバノンへの攻撃)を例に引き、マルクス・ガブリエルやユルゲン・ハーバーマスといった欧州を代表する現代の理性的な知性でさえも、ある一線を越えると「他者」を敵として設定し、武力行使を容認してしまう危うさを指摘する。そこには、シュミット的な「友と敵」の分断論理が、現代においてもなお強力な磁場として働いていることが示唆されている。
また、日本においても1970年代の学生運動の時代に、国家転覆を企図する極左・極右の双方からシュミットの理論が熱狂的に支持されたという皮肉な歴史も紹介される。これは、彼の理論が持つ危険な「使い勝手の良さ」を如実に表している。
難解になりがちなドイツ政治思想であるが、恐るべき政治思想が私たちの日常と地続きの問題として鮮やかに解きほぐされている。読者は本書を通じて、政治というものの持つ底知れぬ恐ろしさと、それを直視するための補助線を得ることになるだろう。
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